夫の実家のお仏壇は、
縁在って、何代か前の町長さん宅のお下がりをいただいた由にて、
百数十年を経た、大きな立派なものである。
しかし、元々?手入れが余りなされておらず、
古い家の普請の歪みにも呼応して、
数年前から、お仏壇の天井部分が崩れかけて来ていた。
修理に出すとしても、金箔も漆も剥げた部分が多く、
何百万単位となりそうなのは、素人目でも判る。
加えて、仏間には、常に隙間風が入ってくるために、灯明がすぐに消える。
義母はこれらのことを、ずっと苦にして来た。
そして、2年前に難病に倒れて以来、
義母は、お仏壇を買い替えようとこころに固く決めていたようである。
先日、親類の大きな法事があり、参列して
金ピカのお仏壇を目の当たりにした、義母のこころに火がついた。
このお仏壇を大切にして来た義父や、
宗教的儀礼は ナンセンスだと思う義兄たちの反対を予測し、
それに対決していくために、「 りうりうちゃんとも相談したんじゃが 」 と言うため、
連日、私の 【 賛成 】 言質を取ろうと、日に何時間も粘られる。
私が 万一、義母に言質を取られたら、
義兄たちと対立する形になってしまうのが怖く、
何度も何度も
「 私では判りません。 おにいさんたちと、相談なさって下さい 」と言うのだが、
義母は一切聞く耳を持たない。

私が NOと言う度に、
仏壇が 今にも崩れそう。
お供え物をきちんと供えられない。
ろうそくの火が消える、電気のろうそくがいい。
死んでから、この仏壇の前で毎回お経を上げられるのはさえん、ふうが悪い。
あんたもそう思うじゃろう? に 対して
↓
崩れないように、金具で補強できる。
お供え物は、脇に小さな机を置けば、きれいに飾れる。
電気のろうそくだけを買える。
敷物を変えて、磨けば、まだまだ見事な仏壇だ。
と 答える私。
何度も何度も繰り返される、この無限ループ。
そのうち、
「 あんたには判るまいが、死に支度は、何かと大変なんじゃ。
今からきちんとしとかんにゃ、死んでも死に切れん。
こんな仏壇で、ひとに参って欲しゅうない。
おとうさんはあてにはならんし、ここで決めるんじゃ。
まずは仏壇からよ 」 ( お墓も待っている )
となって、私が ぐぐっと詰まる。
連日の義母の攻めには、私もぐったり疲れてしまい、
段々と、仏壇も院号も、欲しいのは義母であり、買うのも義母。
それで、義母の魂が安らぐなら、
三男嫁の私が 「 NO 」 という権利はない。
もう、どーでもいーや、という気になってくる。
しかし、義母の次の一声で、ショックの余り涙が出そうになる。
「 新しい仏壇は、おとうさんと私が死んだら、
あんたの家で守って貰わんにゃならんけん、仏間の寸法を今そこで測りんさい 」
げぇ~~ん。
信心深い夫の両親に全く影響を受けず、3人の息子たちは、見事に無宗教。
夫など、結婚のときに宗派を訊ねたら、「 知らん 」 と答えた(驚愕)。
私は逆に、信心深い両親の影響を受け、
宗教というものに多大な興味を持っていた。
私にとって、決定的だったのは、
中学時代に遠藤周作氏の 『 沈黙 』 に出逢ったことである。
遠藤氏の描く、無力なイエスに惹かれ、
父と一戦交える覚悟で、洗礼を受けたい、と申し出た。
勉学を重ね、僧籍を持つほどであった父は、
自分を論破できたら洗礼を受けてもよい、と答え、
ならば、父を超えてみせよう、と、私も懸命に勉学したものである(無謀)。
私は、神とか仏とかいう存在を信じてはいないが、
大きななにものかに、常に生かされている、という感はずっと持ち続け、
宗教社会学を学び、大学4年間の夏を京都に過ごし、
ある宗派の原点回帰運動について、卒論を書き上げた。
だもんで、私のなかには、
幾つかの特定宗派に対するこだわり、が厳然として在る。
夫の実家は、その、私の余り好きでない宗派であった。
結婚時は、夫が無宗派であったこともあり、
それが余り深く関わって来ることもあるまいと想い、
お気楽に過ごしてきたが、この地に転居するにあたり、
無視できないものになって来た。
少年たちには、その宗派のお数珠を買い与えられ、
その宗派の経文を読ませられる。
その都度、私は、実家の宗派の経文が恋しくてならない。
毎夜、お仏壇に手を合わせ、家族で読経してきたのである。
私は、未だに空で幾つもの経文をあげることができる。
ともあれ、夫の実家の宗派のお仏壇が、我が家に来る??
嫌だもーん。
しかし、この週末に長義兄が帰省して来たために急転直下。
あれやこれやとあって、ついに義母の粘り勝ち。
長義兄が 「 もう 好きにしんさい 」 と 匙を投げた、とも言う。
本日、義母は意気揚揚と私を従え、
私のバレーのチームメイトの婚家である仏壇屋さんへ行き、
お友だち価格でかなり安くしていただいて、
本日めでたく?購入なさいました。
11日の大安吉日に、入佛式。
お坊さまやお膳の手配、お披露目、手土産その他、忙しくなります。。。。。。。。。。。。。
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書いていたら長くなってしまったので、
トラックバックいただいて帰ります・・・。